「CEPH LAB」by 中島隆太
2011年9月6日(火)~ 9月22日(木)
このたびGALLERY TARGETでは中島隆太の個展「CEPH LAB」を開催いたします。
作家、プロダクト・デザイナー、キュレーター、大学准教授そして僧侶としてアメリカと日本にて幅広い活動をしている中島隆太によるこの展覧会では、3年間研究しているコウイカをモチーフにアーティストがビジョンする現代アートとは何かを表現します。コウイカに私たち人間が見知っているアート作品を見せ、彼らがどの様に私たちとコミュニケーションをとるのか、これを写真と映像にて見せていきます。会場では、カタログ、グッズ等の販売も予定しています。
2011年9月6日(火)~ 9月22日(木)
レセプション:2011年9月6日(火)19:00 ~ 21:00
中島隆太 — Ryuta Nakajijma —
東京生まれ。レバノン、スイス、アメリカ、日本で育つ。
1997年にカルフォルニア大学視覚芸術学部修士課程を卒業。その後、一時帰国し東京芸術大学大学院美術学部油画科にて研究生として活動。現在、ミネソタ大学美術学部にて准教授として学生を指導すると同時に、作家、プロダクトデザイナー、キュレーター、真言密教の僧侶として活動を続けている。
URL: ryutanakajima.com
Blog: paintingzombies.wordpress.com
【アーティスト・ステートメント】
私が過去10年に渡って各所属大学にて行ってきた研究芸術活動は大まかに三種類に分類する事ができます。1、superimpositionを技法と概念と捉えそこから生まれる現代絵画表現の探求。2、グラフィティやストリートアートの実態と現状の研究。3、頭足類のボディーパターン、カモフラージュを科学的に解析する事による絵画、デザイン、写真、映像などを含む人間の画像表現の進化の究明。これら三つの活動はそれぞれ個展、グループ展への参加、展覧会の企画運営、キュレーション、アーティストコレクティブへの参加と創設、科学研究機関との共同研究などを通して具現化してきました。ここでは、これらを一つずつ簡単にご説明したいとおもいます。
1、 Superimposition
私はこれまで絵画表現において「superimposition」を通じ芸術の総合的役割、新たな可能性と問題点について研究してきました。私は「superimposition」を、ポスト構造主義と大乗仏教の思想を絵画的表現に転換した技法,又は概念と考えております。これは異なる複数の画像を重ね合わせていくことでそれぞれの画像が持つ情報や意味を中和、断片化させ、画面全体を視覚と思考の両面から複雑化させることで、絵画に解釈や理解の増殖と時間的概念を生じさせようという試みとも言えます。そして、この試みは絵画の中に存在する言語学的分別と既成概念を読解不能な多重世界(ヘトロトピア)に置き換え、美術作品を単なる現実の抽象物(モデル)としてだけでなく、一つの独立した現実として再構築出来るのではないかと私は考えています。更に、この技法は 作品制作過程の中でegoとselfを不規則な振り子の様に交差させ作家個人の思想や社会的背景を超越した超自然界的神秘性を作品の中に 抽入していくことの出来るよりメタフィジカルな表現方法の一つではないかと考えています。かつて、1960年代に 鈴木大拙や西田幾多郎 の登場により急接近した東洋と西洋の思想はポストモダニズムの作り出した膨大な情報量の中に埋もれ陰を潜めてしまいました。しかしながら、今、終焉を迎えようとしている西洋的モダニズムとポストモダニズムを考えますと、この東洋と西洋の二大思想形体の融合は、これからの人間世界に必要になるであろう、新しい思想形体の誕生に必要不可欠な要素ではないでしょうか。
2、ストリートアートの実態と現状
ストリートアートは現在のアートの状況を把握していく上で重要な一要素となりました。これは80年代に活躍したキース へリングやジョン ミシェル バスキアの様に当時すでに存在していたアート世界に参加する形で彼らの活動の拠点をニューヨークの路上からギャラーに広げていったものとは全く違い、現在のストリートアーティスト達は彼らの独自の情報ネットワークを駆使し、戦略的かつ組織的に彼らの縄張りを世界の大都市に広げています。さらに、スケートボードや自転車文化、デザイン、ファッション、音楽といった広大なフロンティアとの融合により強靭な経済システムを作り上げ、彼らの存在と主張を様々な媒体を通して発信しています。こういった彼らの活動は、現存する芸術世界に依存する形で存在する現代美術作家の活動より躍動的かつ進歩的であり、一つの社会的モデルとして学ぶべき事が多いのではないかと考えています。
こういったストリートアートの現状を体感、研究する為、私は、世界最大の草の根運動として知られるBicycle Film Festival(以下BFF)に作家兼キューレーターとして2004年から4年間参加し、現在でも世界38都市で開催されているBFF主催の展覧会”Joy Ride”の立ち上げ、企画, 運営をアートディレクターとして担当しました。この展覧会では、環境問題、車依存社会への継承、自転車文化の奨励、アーバンユースカルチャーの促進をコンセプトに、シェパード フェアリーやフィルフロストといったストリートアートの大御所から無名のグラフィティアーティストまでを世界各地から選出し展示してきました。この一般の美術展ではありえない無差別的展覧会は新しい文化活動の形を提示し、その成果はNY TIMES,LA TIMES, Brutus, VOGUEをはじめとする様々なミディアで紹介されました。ニューヨークで自転車事故に会った一人のイタリア人青年の信念が10年間でここまで大きくなったという事は驚異的であり、それは、思想的、哲学的差異はあるにしても、現在世界各地に点在するアートプロジェクトにとって有効なモデルであると私は考えています。
3、イカの研究
過去3年間、私は頭足類(コウイカ)の行動研究とそれに伴う作品の制作に力をいれてきました。幸運な事に三機関から研究助成金も頂き、海もない極寒のミネソタでは叶わない極めて科学的実験をテキサス州にあるNational Resource Center for Cephalopodsと 琉球大学理学部頭足類研究室にて研究者達と共に行ってきました。イカ•タコの様な頭足類は人間の文化と様々な形で密接な関係にあるにも関わらずその実体は水産関係の研究、キャラクターグッズのモデルが大半をしめており、彼らの生態や行動は未だに多くが謎に包まれています。その中でも私が特に注目しているのは人間並みに高性能な眼球から得た画像情報を彼らの単純な脳で処理し、何百万とある体内のピクセルに反映させている事ではないでしょうか。これは美術制作の基本要素である<環境><主体><画像>の関係に酷似しているだけではなく、イカ同士のコミュニュケーション手段としても用いられ、彼ら独自の言語形体としてイカ社会の構成の一部として機能している可能性があります。もしそうであればコウイカの生態研究は人間の画像制作の進化と起源を解く鍵になるのではないでしょうか。
現代の人間社会は情報とイメージの飽和状態に陥っているといっても過言ではないと思います。その中で形成される芸術もまた例外ではなくポストモダニズムの名の下に、構造主義的思想の具現形体として文化による文化のための芸術を作り続けてきたように思えます。この状況はモダニティーが掲げた宗教から離脱した自己の確立とう一大プロジェクトが比較文学と言語学の理論の登場により、その最終段階に入った事を暗示しているのではないでしょうか。もしそうであれば、今の芸術の最重要課題は200年続いたモダニティーの流れの見直しと新たな思想形体を模索して行く事ではないでしょうか。このイカ研究は、イカという動物の行動を理解していく課程で、科学と文化、更には宗教との対話の可能性を提示し、自然と文化の狭間で種の保存という生物学的且つ明確な目標と存在意義を持つ芸術と思想を構築していく為の研究だと考えています。これは私に取って”superimposition”やストリートアートの研究にも繫がる大きな研究課題であり目標であると思っています。
中島隆太、2011
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GALLERY TARGET is pleased to announce a solo exhibition by Ryuta Nakajima “CEPH LAB”
As an artist, product designer, curator, associate professor and monk, Nakajima has been involved in variety of activities around the world. In “CHEP LAB” Nakajima will ” express what contemporary art is through cuttlefish which he has been studying for 3 years. By showing master’s works to cuttlefishes, we can witness how they communicate with us and with art thorough Nakajima’s photography and film.
Sept. 6th (tue) - 22nd (thur)
Opening reception on Sept. 6th (tue) from 7 - 9 pm
Ryuta Nakajijma
Born in Tokyo, grow up in Lebanon, Switzerland, United States and Japan.
In 1997, graduated from University of California, San Diego with Master of Fine Arts Program. Till 2000, returned to Japan and joined Post-Master Independent Research Program of Tokyo National University of Fine Arts and Music. He currently reside and works as anassociate professor of the art department of University of Minnesota.
URL: ryutanakajima.com
Blog: paintingzombies.wordpress.com
Project Cephalopod
The experience of Art making is a constant oscillation between the state of “jiga” and that of “muga.” This experience is a certain drama, which consists in a complex weaving of “jiga” as the intellectual and emotional aspects within the world of logical differentiation, and of “muga” as the inexplicable fusion between the artist and Nature. Within the development of this drama, an artist will be able to infuse the state of “muga” into one’s work. In this way, the painting will possess the unexplainable quality of Nature and be able to exist as an individual, autonomous reality that transcends, although it may include, the artist’s ideology and his socio-political environment.
In my most recent interdisciplinary project entitled The Metaphorical Application of Behavioral Ecology of Cephalopods in Contemporary Art, cognitive and interpretive system of a cephalopod (Octopus, squid and cuttlefish) body patterns are used as biological and metaphorical models to code and to re-map visual information such as paintings, photographs and video. More specifically, Cuttlefish adoptive coloration is triggered by replacing natural substrates (sand, mud, seaweed, etc…) by major 20th century paintings, photographs and video to stimulate and trigger its camouflage and body pattern communication behavior.
The data gathered has been functioning as the conceptual structure for series of paintings, photographs and a video work, all of which synthesize this rather complex method of visual representation into a tangible and readable installation. Furthermore, through this project, I attempt to investigate the origin of visual language which seems to be formed out of biological necessity and fundamental three-step structure [the environment, an individual interpretation and visual output.] This parallel between the image making process and cephalopod body pattern behavior is the main premise of this project.
The quest of modernity, which lasted over 200 years, has come to its’ final phase in the form of post modernism. Many of the past victorious attempts to define “individualism” and “self” seem to have found the wall of linguistics structure and categorization as governing principals of human consciousness. Postmodernism tends to recycle façade of preexisting methods and theories, thereby creating fragmentation and dislocation. Simultaneously, the presence of computer technology is rapidly reshaping our visual culture by offering the potential for more streamlined production and distribution possibilities, i.e. YouTube claims have 65,000 videos uploaded everyday and has over 100,000,000 viewing per day. Considering this current socio-political, philosophical and cultural environment, it is essential to investigate the effect and implication of the visual culture, which may include social behavior, biological necessity, evolutional progress and visual communication, by asking such existential questions as Why do we make images, where do they come from and what is their primary function?
In order to answer some of these question. The collective is focusing on the cephalopods behavior as biological and metaphorical model that may provide certain key information need to uncover the mystery. Cephalopods such as the cuttlefish are known for their ability to camouflage themselves quickly into their surrounding environment.
Ryuta Nakajima, 2011
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